本当にアタマの良い人は、速読なんてしません

2023年03月29日

今年度の千葉県公立高校入試が行われてちょうど1か月ほど経ちました。

今年も国語は難しかった!いや、「難しい」というか、解いていてうんざりする感じでしたね。

例年どおり現代文の読解は、小説と説明文が一つずつ出されたのですが、それぞれの本文のあとに、さらに本文の感想を語り合う会話文が出てきまして、これが受験生のスタミナをゴリゴリ削っていったんじゃないでしょうか。平均点は、まず50点いかないでしょう。下手をしたら40点を切るかも…!?

その他、数学も理科も、とにかく問題の文章が長い!実験の手順などを丁寧に書いていて長いというのなら分かりますが、先生と生徒の会話とかはいらんだろうと思ってしまいます。

報道にもありますように、千葉県公立高校入試のみならず、大学受験でも中学受験でも、最近はとにかく入試問題の文章が長いという話は、皆様もよく耳にするのではないでしょうか。

こう聞くと、受験で成功するために、子どもに「速読法」のようなものを身につけさせた方がいいのではないかなどと考える単細胞な人が出てくるのではないかと想像します。しかし、そう単純に物事を考えない方がよいでしょう。

今から7年前の記事ですが、読む速さと学力について、面白いものがありましたので紹介いたします。この記事の中に、非常に興味深いグラフが掲載されています。

このグラフは、東京都江戸川区の明利学舎さんが作成されたもので、「私塾界」という業界誌に掲載されています。

読書指数スコアを縦軸、1分間に読む文字数を横軸にしたグラフで、この塾さんの国私立受験コースの生徒のデータがプロットされています。

読書指数スコア、読書速度の数字は、読書指数診断というテストの成績です。読書指数スコアとは、語彙知識や読みの正確さなどを総合的に数値化したもののことです。

それぞれの生徒の合格した私立・公立中高一貫校名がグラフの横に記されています。全般的に、スコアが高ければ高いほどより学力上位の中学に合格していて、読む速さも速い方がより難関の中学に合格する傾向があるようです。

しかし、最も興味深いのは、このグラフ、下のような2つの流れがあるように見えることです。

紫色の矢印は、読書指数スコアは低いが、読書速度が速い生徒の一群です。言い換えれば、語彙知識は少ないが、速く読む傾向のある生徒たちです。

合格校は、左から⑧かえつ有明など、⑨国府台女子学院など、⑩東京都市大付属などとなっており、たしかに読む速さが速くなるほどより難しい中学に合格しているようです。一番右側の生徒は、1分間に読む文字数が1,000文字近いです。

しかし、赤い矢印をご覧ください。こちらは読書指数スコアが高めで、読書速度はそれほど速くない生徒の一群です。換言すれば、語彙知識が高いが、それほど速く読んでいるわけではない生徒たちです。

注目すべきはその合格校です。一番上位の生徒は、渋谷教育学園幕張や早稲田などで、2番目の生徒は市川や渋谷教育学園渋谷などに合格しています。読む速さは、2番目の生徒は分速630文字くらいで、トップの渋幕に合格した生徒は、分速500文字台に過ぎません。

まとめると、読むのが速いことでより難関中学に合格する傾向はあるにはあるが、渋幕などの最難関校に合格するためには、実はそれほどの速読は必要なく、むしろ語彙知識などがずば抜けて高いことの方が重要であると考えられます。

つまり、

速読<<<精読

ということです。

本当に国語の読解力をお子さんに身につけさせたいと思うのであれば、まずは語彙力を伸ばす、そしてていねいに正確に文章を読ませる努力をすることです。