「クラブ活動と勉強の両立」なんてまやかし

2024年03月07日

先日の塾生の面談での話なのですが、所属するクラブの指導者に、練習をたまに休んで塾で勉強したいと相談したところ、「ならばクラブをやめろ」と言われたそうです。なんともため息しか出ません。

まじめなお子さんほど、その性格に付け込んで、過剰に毎日のようにクラブ活動に参加させるような指導者がいるようですね。そもそも学生・生徒の本分は勉強であることに疑いはなく、プロスポーツ選手やアーティストになるのでない限りクラブは趣味であって、余暇に打ち込むべきものであるということをきちんと認識していただきたいものです。

そして、子どもたち一人ひとりの能力や特性が違う以上、どれくらいの時間勉強時間を確保するか=クラブにはどこまで参加してよいかは一人ひとり当然違います。そこは最大限考えてあげなければいけないことです。

定期テスト直前期になると、おおむねどこの中学校も7日前から部活動休止になります(一部5日前という変な学校もありますが)。

こういうのもいかがなものでしょうか。一人一人の子どもの学力や目標の高さによって、必要な学習時間は違うはずなので、全員一律に部活動休止というルールを順守しなければいけないのかということにも、私は疑問を感じます。人によっては1週間と言わず10日、2週間休んだっていいと思います。

「うちの子はこれだけの勉強時間が必要です。それを確保したいので、部活動にはこれだけ参加させていただきます」といった形で、生徒本人や保護者、顧問たちで取り決めるようなことをしていくべきなのではないかとかねて思っております。

こう言うとすぐに、「でも○○先輩はクラブもすごく頑張ってやっていたのに△△高校に行った。やっぱり勉強とクラブの両立が大切だ」などという人が必ず出てきます。

だから何だと。○○先輩はあなたとは別人です。こんな話は、「モーツァルトは5歳で作曲をしたのに、何でうちの子はできないんだ」とか、「J.F.ケネディは44歳で米国大統領になったのに、何でうちの父ちゃんはそうじゃないんだ」と思うのと同じくらいバカげています。

また、「クラブは人格形成やコミュニケーション能力を磨く場になる。やっぱり勉強とクラブの両立が大切だ」などとしたり顔して「ご高説」を垂れる大人もいるかもしれません。こういう言説に対しては、「どうぞ存分にやってください。ただしお子さんの勉強時間を確保した上で」としか申し上げようがありません。

どうも「勉強とクラブの両立」という言葉が出てくると、多くの方が思考停止になってしまうのは困ったものです。いかにこの言葉が空虚で意味のないものか、実態に即してよくよく考えてみてほしいものです。

「勉強とクラブの両立」なるものの実態とはどんなものか。ほとんどの子どもたちにとってそれは、指導者などに言われるままに毎日のように「練習」に長時間拘束され、くたくたになって勉強はグダグダというものです。こんなもの理不尽極まりないことは言うまでもありません。にもかかわらず「うちの子は勉強とクラブの両立ができていない」などと思ったり言ったりするのならば、それはむしろ大人の方に判断力が足りないのです。問題はクラブの方にあります。

私は、もともと部活動などを否定する者ではありません。私自身、高校で吹奏楽部、大学でオーケストラに所属していて、かなり熱心に活動していました。そこで得た経験は大変貴重なものだと思っています。

重要なことは、部の活動そのものが過剰にならないこと、個々の子どもたちが部の活動への参加の程度を主体的に決められることです。

いくら野球が好きだからと言って、草野球に夢中になって仕事をほっぽり出すような大人はいません。まともな大人で仕事に差し障りが出るまで趣味に没頭する人はいません。無理だなと思ったらやめるでしょう。子どもも同じようにすればよいのです。

それでも現実は、子どもが際限なくクラブに時間と体力を奪われていくのを横目に、何も決められない、行動できない大人が多いのかなとも想像します。