2018年03月12日 15:10

今さら子どもに「速読法」をやらせる情弱なオトナたち

 「速読法」とは、眼球を広く速く動かすとか、本のイメージを「潜在意識に映す」などすることで、文章を速く読めるようになるとするオカルト言説である。「速読法」を標榜する団体が、しばしば「右脳トレーニング」とやらを吹聴するところからも、こういう言説を弄する輩の傾向がよく分かる。

 科学ニュースに関心のある方だと、すでに「速読は実は不可能だと科学が実証」・「『速読』は科学的に不可能だと証明される」といった記事をご覧になったことがあるだろう。これは、カリフォルニア州立大学サン・ディエゴ校の心理学者らによる研究報告を基にした情報だが、数々の「速読法」を調査した結果、眼球運動であるとか、本のイメージを「潜在意識に焼き付ける」などとする「方法」には結局何の意味もなく、「速く読む」ということをすればするほど内容の理解度は下がる、つまり「速読法」とやらは単に文章を読み飛ばしているだけであることが科学的に実証されたということだ。

 要するに、「速読法」などというものはもはやオワコンなのである。上のレビューは2016年に発表されたものであるが、2018年にもなって速読法なるものをやろうなどと考えるのはただの情報弱者。ましてや、子どもにそんなものをやらせようなどということになると、もはや犯罪的と言っていいだろう。

 ここに「速読法」の「インストラクター」なる者のブログを紹介しておく。短いので全文を引用する。

ニーチェ

 

こんにちは~いんすとらくたーWです。

だんだん暖かくなってきましたね~近所ではもう梅の花がさき始めてました。

 

さて、今日はニーチェの本のご紹介。

かの有名な「ツァラトゥストラはかく語りき」です。

 

自宅に来る友人たちには、うちの本棚にニーチェがあるのをみて

悪趣味だなぁ~なんていわれてしまいますが、それでも好きです。

 

ニーチェの著作の中では最も易しく読みやすい本ですが、読解という観点からいうと最も読解不能な本です。

 

アイロニカルなツァラトゥストラが、大衆を啓蒙していくという一見小説のような流れになっていますが、

これがなかなか難しいでもなぜかどんどん読んでしまう本です。

 

最近はニーチェの一言、みたいな感じの名言集がはやっているみたいですし、

原文にあたってみるのもオツなもんだなぁ~と思いました。

 

タイトル:「ツァラトゥストラはかく語りき」

読破時間:48分

評価:★★★★☆

 

でした。

  なんというか、ここまで知性のかけらもないような文章を公にできる神経には一驚を禁じ得ないが、「速読法」の「指導者」がどの程度の者であるかよく表しているだろう。よほど無恥の者でなければ、「ツァラトゥストラ」を「48分で読破した」などとは豪語できまい。

 何が「原文にあたってみるのもオツなもんだなぁ~」だよと、見ている方が恥ずかしくなる文章であるが、あえてこの記事の「存在価値」を指摘するならば、「速読法」では、文章に何が書いてあるかを読解できるようにはならないということを明らかにしていることだろう。この筆者は、どうやら「ツァラトゥストラ」の中に何が書いてあるのか皆目理解できないばかりか、そもそも文章を読むとは書かれていることを理解することであるという観念さえないようだ。

 非常に興味深い文章なので、Web魚拓をとっておいた。

 最後に、読む速さと学力について、面白いグラフがあったので紹介しておく。

 このグラフは、西葛西の明利学舎さんが作成されたもので、「私塾界」という業界誌に掲載されている。

 読書指数スコアを縦軸、1分間に読む文字数を横軸にしたグラフで、この塾さんの国私立受験コースの生徒のデータがプロットされている。読書指数スコア、読書速度の数字は、読書指数診断というテストの成績。読書指数スコアとは、語彙知識や読みの正確さなどを総合的に数値化したもののことだ。

 それぞれの生徒の合格した私立・公立中高一貫校名がグラフの横に記されている。全般的に、スコアが高ければ高いほどより難関の中学に合格していて、読む速さも速い方がより難関の中学に合格する傾向があるようだ。

 しかし、最も興味深いのは、このグラフ、下のような2つの流れがあるように見えることだ。

 紫色の矢印は、読書指数スコアが低いが、読書速度が速い生徒の一群である。言い換えれば、語彙知識は少ないが、速く読む傾向のある生徒たちだ。

 合格校は、左から⑧かえつ有明など、⑨国府台女子学院など、⑩東京都市大付属などとなっていて、確かに読む速さが速くなるほどより難しい中学に受かっているようだ。一番右側の生徒は、1分間に読む文字数が1,000文字近い。

 しかし、赤い矢印を見てほしい。こちらは読書指数スコアが高めで、読書速度はそれほど速くない生徒の一群だ。換言すれば、語彙知識が高いが、あまり速く読もうとしない生徒たちである。

 注目すべきはその合格校だ。一番上位の生徒は、渋谷教育学園幕張や早稲田などで、2番目の生徒は市川や渋谷教育学園渋谷などに合格している。読む速さは、2番目の生徒は分速630文字くらいで、トップの渋幕に受かった生徒は、分速500文字代に過ぎない。

 まとめると、読むのが速いことでより難関中学に合格する傾向はあるにはあるが、渋幕などの最難関校に合格するためにはそれほどの速読は必要なく、むしろ語彙知識などがずば抜けて高いことの方が重要であると言えるだろう。

 つまり、

速読<<<精読

だということ。

 子どもに「速読法」とやらをやらせた結果としては、良くも悪くも何も起こらない。その「習得」に浪費されたお金と時間が二度と戻ってこないだけである。もちろん、自己満足的に「集中力が付いた」とか、「読むのが得意になった」などと思うのは自由だが。

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