素人見立ての国語力判断は、けっこう危険ですよ
このところ、連日ご新規の方からお問合せ、学習相談を承っております。はやり「国語力」ということでご相談や無料体験授業においでになった方が多いのですが、今日は、保護者の皆さんとお話をしていて気になったところがあったので、その点についてお話ししたいと思います。
「国語力」の判断って難しいなと思います。
なぜか。一口に「国語力」といっても、それにはいろいろな側面があるからです。異口同音に「うちの子は国語力がないんです」と言ってこられても、その中身は実に多様です。「国語力」のどの点に問題があるのか、国語力についての様々な観点からの学習指導経験のない人には、本質を見通すことはまず不可能でしょう。
「国語力」のうち語彙力について、次のようにタイプを分類してみましょう。
A(語彙力があって、成績が良い)
B(語彙力はあるが、成績は悪い)
C(語彙力はないが、成績は良い)
D(語彙力もなく、成績も悪い)
Aのタイプのお子さん。低学年の間は、まあ、放っておいて大丈夫でしょう。
Cのタイプ。語彙力はたいしてないんだけれども、小学校のうちはそれほど成績も問題ないお子さん。これは全体として女の子に多いように思われます。
想像なんですが、女の子は、男子に比べて、日常的にほかの女友達とたくさんコミュニケーションをとる必要があるように思われます。そのために、身についている語彙数自体はあまり多くなくても、少ない語彙を駆使して自分の考えや気持ちを伝える訓練が、日々の生活の中でできやすい。それで、あまり語彙力はないのだけれども、小学校のうちはそれほど成績も問題がなく、きちんとコミュニケーションも取れるため、国語力がないように見えにくいところがあります。
もちろんこのまま語彙力について何もしなければ、成績はジリ貧になっていきます。実は「国語力がない」ことに気付きにくいという点では、けっこう怖いケースです。
Bのタイプ。これは男子に多いですね。
語彙力があるのにだめってどういうことか。男子は、小学生の間、いや下手をすると中学生になっても、まともに言葉を使って自分の気持ちや考えを述べられないことが珍しくありません。「ボーッ」とか「ウエ~」、「イッヒッヒッヒ」といった感じで、意味不明の間投詞で男子どうし「コミュニケーション」をとっているのを、ご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。
実はこういうお子さん、理解力は高いんです。語彙力はありますから、大人が話すことは大体わかる。しかし、コミュ障みたいなもんですから、何か言わせたり書かせたりすると、たちまちグダグダになってしまいます。
こういうお子さんにとって、実はお母さんが脅威だったりします。女性からすると、机に向かって「プキュープキュー」などと言って息子さんが手いたずらをしているのを見ると、ゾッとしてしまうのではないでしょうか。「うちの息子、ちょっとおかしいんじゃないかしら」と。本当に、息子がわけ分かんないというご相談をされるお母さんは、非常に多いのです。
怖いのは、それで「うちの息子は国語力がない」と決めつけられてしまう方がいることです。そして、お子さんに繰り返し繰り返し、「国語力がない」ということを様々な場面で言ってしまっています。もうこうなったら、お子さんは自分は「国語力がない」と思うしかありません。
実際に国語道場で語彙力チェックをやってみると、それほど問題がないケースは少なくありません。頭の中にはちゃんと知識があるんです。ただ、アウトプットが下手なだけなんです。それなのに、母親から再三再四「国語力がない」と言われ続け、すっかりそのような自己認識が刷り込まれてしまう。これが何といっても怖いですね。
Dのグループ。これは一刻の猶予もありません。今すぐに読書指導「ことばの学校」を受講しましょう。
このグループのお子さんのいるご家庭で気になるのは、決断が遅い、何もしない方が多いことです。病気でいえば、かなり深刻な状況になっているのに、すぐに病院に行かないとか、なぜか放置しているようなことです。そして、お子さんに「国語力がない」と嘆いています。失礼ながら、これはお子さんの国語力よりも、親御さんの判断力と決断力の問題です。身についてもつかなくてもさして重要ではない習い事とか、お子さんの現状の日本語力にあっていない学習指導などを受けさせている場合ではありません。
まずは、お子さんの「国語力」の何が問題なのか、それを見極められる専門家にご相談ください。