できる子ほどテスト前になると「やばいやばい」言う理由
塾で指導をしていると、面白い現象に遭遇します。今度高校3年生になるある塾生は、評定平均4.7という驚異的な好成績の持ち主ですが、定期テスト前になると決まって「やばい、全然できていない」と焦りながら勉強に励んでいます。
一見すると、余裕があるはずの優等生がなぜそれほどまでに不安がるのか。その答えのヒントを、意外なところで見つけました。
谷川岳の遭難解説動画から学ぶ心理学
最近、私はYouTubeの『生きて山から帰るには』というチャンネルをよく視聴しています。私自身登山経験は全くと言っていいほどやらないのですが、極限状態での判断や人間の心理に関する深い学びがあるからです。
特に印象的だったのが、世界一遭難死者が多い「魔の山」として知られる谷川岳を扱った動画です。ここで紹介されていたのが「ダニング=クルーガー効果」という心理現象でした。
「バカの山」と「絶望の谷」
この効果をグラフ化すると、習熟度と自信の関係が面白い曲線を描きます。
バカの山:物事を始めたばかりの初心者が、少しの知識を得ただけで「自分はすべてを理解した」と錯覚し、自信満々になる状態です。
絶望の谷:学習が進み、中級者から上級者へと向かう過程で、その分野の圧倒的な奥深さに気づかされるフェーズです。自分の無知や未熟さを痛感し、一時的に自信を大きく喪失してしまいます。
テスト後に「今回は90点取れた!」と自信満々に語っていた生徒が、返却時に意外と点数が低かったという光景は、まさに「バカの山」に登っていた状態と言えるかもしれません。
「やばい」は成長の証
一方で、冒頭の塾生のように「やばいやばい」と繰り返す生徒は、すでに「絶望の谷」に足を踏み入れているのです。
学習が進んでいるからこそ、自分に何が足りないのか、どこがまだ完璧でないのかが客観的に見えています。つまり、「やばい」という言葉は、物事の本質や難しさを正しく理解できている証拠なのです。
もしお子さんがテスト前に「やばい」と嘆いていたら、それは順調に「絶望の谷」を歩み、真の実力者へと近づいているサインかもしれません。その不安を否定せず、「自分の現在地が正しく見えているんだね」と、一歩踏み込んだエールを送ってあげたいものです。

