実はデタラメだらけのChatGPT~AIが当たり前の時代に必要な勉強とは

2023年03月31日

先日のNHKニュースの報道で、こんなものがありました。

読書感想文コンクール AI悪用への懸念から応募要項を改定へ

「小中高校生の読書感想文コンクールを主催する全国学校図書館協議会は、AI=人工知能を悪用して作成された感想文が応募されてくることを懸念して、来年度の応募要項を改め、盗作や不適切な引用があった場合に審査の対象外となり、事実上の失格となることがある・・・AIが生成した文章をそのまま引用し、さらに執筆者本人がAIの利用を認めた場合などに適用される・・・一方、文章の校正にAIを使うことについては問題ない」

NHKなので「AI=人工知能」なんて言っていますが、要するにChatGPTのことですね。これに、「今年の課題図書の『◯◯』という本の感想文を書いてよ」などと指示して文章を書かせて、それを原稿用紙に書き写して提出したりしたら、ダメですよということでしょう。当たり前といえば当たり前のことですね。

というか、私もChatGPTは何度か使ってみましたが、回答がうさんくさいことこの上なく、こんなものを、「自分が書きました」などといって人様に見せるなんて、思いもよらないです。

ちょっと前になりますが、このようなツイートが目に入りました。

すぎやまこういちさんと言えば、ご存じの方も多いとは思いますが、数々のヒット歌謡曲を生み出した作曲家ですが、なんといってもゲーム音楽「ドラゴンクエスト」シリーズの作曲者として有名です。

それが、ChatGPTから出力された文章を読んでいくと、あれあれ?すぎやまさんが「ナウシカ」や「千と千尋」の作曲をやったって?いつの間にか久石譲さんの話とごっちゃになっています。

こんな感じで、ChatGPTが出す回答は、かなり怪しいものが多いです。こういうデタラメ回答を自信満々に答えてくる様を、数学者でAI研究者としても高名な新井紀子さんは、「サイコパス」と形容しています。

上のような、すぎやまこういちさんと久石譲さんのように、とても有名で、すぐにみんなが突っ込めるような内容ならまだよいのですが、それが本当がどうか、すぐに判断しにくいものとなると、なかなか難しいところがあります。

これは、先日私が個人的にChatGPTに質問してみたものです。得点の「40点だい」という時の「だい」に、「台」を使うべきか「代」をとるべきか迷ったので、AIに尋ねてみたのです。

「40点代」は40点~49点のことで、「40点台」は41点~49点のことだという説を、私は聞いたことがなかったので、非常に驚きました。その時その場にいた国語道場のスタッフにも、このような説を聞いたことがあるか尋ねてみましたが、誰もそんな話は聞いたことがないと言います。

すぐにGoogleで検索して、ことばの使い分けについて述べているブログなどを参照してみたところ、おおむね年代や時代については「代」、それ以外の数量については「台」を使うと書かれていました(これが正しいかどうかは措いておきます)。

そこで、改めてChatGPTに、先ほどの台と代との使い分けについて、そのように主張している人や本、ブログのURLなどを示すように求めましたが、自分の主張の根拠については、一切明らかにしません。

出典を明らかにしてくれれば、珍説であっても、なるほどこのように主張している人や本があるにはあるのかということも分かるのですが、それが全く分からない。ChatGPTの大きな問題点の一つだと思いました。

こんな感じですので、とくに子どもがChatGPTを使ってものを調べたり、そこに書かれていることを参考にしようとしている場合は、大いに注意が必要だなと痛感した次第です。親としては、お子さんに「ChatGPTの言うことはデタラメばっかりだよ」と繰り返し言ってしまってよいとさえ思います。

まずは、何事も「本当にそうなのかな?」と疑ってみる姿勢が大切です。そして、少しでも「おかしいんじゃないかな」と感じたら、学校や塾の先生(も怪しいことは多いですが)や専門家が書いた本や記事といった信頼できるソースにアクセスできるようになっていることだと思います。また、自分自身が確かな知識をたくさん身につけていくことも欠かせません。

AIが出してきた文章をチェックする能力がなく、その内容をそのまま大切な文書に転記して提出するなんてことをしていたら、それがデタラメなものだった時に、大変なことになりかねませんし、そうなる可能性は高いと言わざるを得ません。

最初に紹介した読書感想文のニュースに戻りますが、全国学校図書館協議会は、感想文の校正にAIを使うことは認めているんですね。校正というのは、誤字・脱字などの誤りを調べて直すことです。

で、ChatGPTでも、これはけっこう使えるようです。また、これは私も使ったことがありますが、文体を直すのも、自動でやってくれるので便利です。例えば、元の文章が「~です・~ます」体であるものを、「~だ・~である」体に直せ、といったことです。

ただ、AIにこんな能力を見せつけられると、国語の記述問題を日々子どもたちに取り組ませている身としては、自分の力で自分の文章を手直しできず、先生にいちいち指摘されて直しているようなお子さんは、冗談抜きで将来AIに仕事を奪われるような人になってしまうんじゃないかと、心配してしまいます。

対話型AIの発達に伴って、結局人間は、それが返してくる内容が正しいかどうかを判断できる知識や、疑わしければ確かな資料にあたる姿勢を今まで以上に身につける必要ができたと言えましょう。また、自分の書く文章くらい、自力でしっかりと校正できるなんてことは、最低限身についていなければ…と思いました。

結局、これまで以上に基本的な勉強をしなければいけなくなったということではないでしょうか(^^;