「ことばの学校」は「速読術」ではありません
年末年始のお休みが終わりまして、国語道場は今日から授業始めになります。ありがたいことに新年初日からお問合せをいただいております。
今日は、小・中学生向けの読書指導「ことばの学校」について誤解されやすい点についてご説明したいと思います。
これは何度強調してもしすぎることはないのですが、「ことばの学校」はいわゆる「速読術」ではありません。
「速読術」というのは、私が調べたところ、文字を読むのではなく、本をざっと眺め、短い時間で書かれている文字を拾い、知識や想像で意味を組み立てる方法であるようです。
私の感覚ですと、この「速読術」なるものは、知っている内容の本や、タイトルや帯を見れば読まなくても分かる本を読みたい人ですとか、ビジネス本やら自己啓発本、偉人の名言集と、自分が聞きたい言葉を求める「大人」には役に立つ方法なのかなといったところです。
逆に、未知の世界のもの、経験したことのない人生・感情が描かれたものなど、丹念に内容をたどるべき文章を読むのには適さないのではないでしょうか。
人生経験の浅い子どもが読むべき本はむしろ後者のほうです。そういう意味で、「速読術」を子どもたちが身につける必要が特にないことは、明らかであるように思います。
子どもが読書を通して経験するべきなのは「本とともに生きる」経験です。それは、爆発的な歓喜、胸の張り裂けんばかりの悲しみ、破滅的な怒りといった、日常生活の中では経験できない幅広い感情であるとか、謎――年齢的に若かったり、ちょっと考えたくらいでは分からないことのほうが、この世界では大切だということ――を知ることです。
明日の仕事に役立つ知識や情報がちゃっちゃと頭に入りさえすればいい「大人」の読書と、人生そのものを学んでいくべき「子どもたち」の読書が本質的に違うということを、心ある大人は知ってほしいと思います。「◯◯中学の入試では長い文章を短時間で読める読解力が必要」なんて情報を聞きかじって、単語に反応して速読術をやらせてしまうような親御さんもいる屋に聞いておりますが、大人としてもうちょっと物事をきちんと考えてほしいものだと思わざるを得ません。
また、塾経営者の方で、あまり考えずに「速読術」を運営されてきた方は、大人のための講座は残しても構いませんが、子どもたちのためには早急に「速読術」はやめて、「ことばの学校」に加盟することをお勧めしたいと思います。