子どもの自己肯定感が第一

2023年04月19日

例えば、お子さんの学年順位が、前回のテストより1つ上がったとします。それをどのように捉えられますか?

「あまり成績が上がっていない」と思ったり言ったりされるようなら、親として一番やってはいけないことをやってしまっているかもしれませんというお話です。

5~6年前のことになりますが、私の息子が所属していた中学校の吹奏楽部が、千葉女子高校のオーケストラ部と合同練習をするというので、ずうずうしく見学させていただいたことがあります。千葉女子高オーケストラ部顧問のY先生や保護者の皆様が歓待してくださいまして、色々と興味深いお話をしてくださいました。

千葉女子高校のオーケストラ部は、コロナ禍の前まで、3年おきにヨーロッパ公演をしていたとのことですが、スイスの学生オーケストラとの合同練習でのこと。当地の学生さんは、日本の我々の感覚でちょっと厳し目に注意されると、かなり落ち込んでしまうそうで、そのまま部屋から出て行ってしまうこともあるそうです。あまり厳しく叱られることにそもそも慣れていないのではないかとY先生は仰っていました。

私自身は子どもたちに厳しめのことを言うことがある人間ではあるのですが、それでも今は極力しないように努めています。そのほうが明らかに子どもたちが伸びるからなんですが、Y先生のお話には我が意を得たりという感じがいたしました。

内閣府は、毎年若者の意識調査をして発表しています。令和元年度版では、日本・韓国・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンの7カ国の比較調査が出ていて、大変興味深いです。

注目すべきなのは、日本人の若者が、これらの国々の中で突出して自己肯定感が低く、自信がないということでしょう。

先ほどのスイスの若者の話をお読みになって、「なんと軟弱な」と思われた方もいるかもしれません。しかし、こうした調査から日本の若者の極端な自信のなさが明らかになることで、むしろ子育て・教育と称して、子どもの悪いところばかり言うことを当たり前と考える大人がたくさんいる日本社会の異常さが浮かび上がってくるのではないでしょうか。

冒頭の例に戻りましょう。お子さんのテストで学年順位が1個だけ上がったとしましょう。まずここはよくやったと褒め、抱きしめてあげるくらいのことをするのが正解ですね。

ここで、「あんまり成績が上がっていない」と思ったり言ったりされるとすると、それは先進文明国家の親としては、かなり異常なものの感じ方、行動をしているのだとお考えになったほうが良いかもしれません。

まして、良かったところをスルーして、悪かったところをほじくり返してあげつらい、叱るなんてことは論外。虐待だと言っていいとさえ思います。

私は、立場上、小学生から大学生までの若者と日々接しています。その中で、彼らの自己肯定感の低さについては、本当に危機的なものを感じます。

彼らに自分について語ってもらうと、欠点ばかりを言います。成績も生活態度もさして問題がなく、むしろ頑張っているなと思われる点が幾つもあるようなお子さんでも、「自分の長所はわからない」なんてことを言います。

皆さんのご家庭でも、是非ご自分のお子さんと語り合ってほしいと思います。もしお子さんが自分の欠点ばかり思いつき、長所を言えないようであれば、ご家庭や学校などが、子どもをけなす環境になっているのかもしれません。

子育ての本来の目的が、子どもを自分の頭で考え、自分の力で食っていける人間に育てることであるならば、少しくらい人より頭が良くても自分の欠点しか思いつかないような人間と、多少吹かし気味でも、「俺はここを頑張った」、「私はこれを出来ます」と自信を持って言える人間とどちらに育つのが良いかは言うまでもありません。

「うちの子、塾でちゃんとやっています?」

保護者の方々から何千回伺ったかしれない質問です。国語道場の生徒たちはほんとうによく勉強しますので、どうしてそんなことを聞かれるのかなあと思うことしばしばです。何気ない質問ですが、それが自分の子どもに対する不信の表れで、子どもをけなす「子育て」につながっているのかもしれないと思うと、いささか恐ろしく思われもします。

とにかくも保護者の皆さんに申し上げたいことは、あなたのお子さんは塾でちゃんとやっているのはもちろん、素晴らしい、最高のお子さんだということです。どうかお子さんのことを信じ、何かちょっとでも良いことがあったら共に喜んで、抱きしめてあげてください。