兄弟姉妹、親がどう接するかは本来とても難しい

2021年09月18日

先日、国語道場が利用しているご連絡アプリの運営会社主催で、教育評論家の親野智可等さんのオンライン講演会があり、私も視聴しました。塾生の保護者の方も無料で視聴できるイベントでした。親野さんのお話を聞いていて、「あぁ、この話は◯◯君のお母さんが聞いていてくださるといいな」とか、「この部分は△△ちゃんのおうちの方にぜひ聞いてほしいなぁ」などと思うことが多々ありました。私も、学生アルバイトで塾講師を始めたところから塾の仕事を始めて約30年になりますが、その経験から得たものの感じ方や考え方の多くの部分で、驚くほど親野さんに一致します。

一時間を超える公演の中で重要なポイントはいくつもありましたが、一つみなさまにも紹介したいことは、兄弟姉妹それぞれに対する接し方の注意点についてです。

国語道場では、年に3回定期的な個別面談を実施しているのですが、その際、本人のいるところで、「上の子はこういうのはちゃんとしていたんですけど、この子はだらしなくて全然ダメなんですよ」などといったことをずけずけ言われる親御さんがまれにいらっしゃいまして、聞いていてヒヤヒヤさせられることがあります。塾長の私は一人っ子だったもので、そもそも兄弟と比べられるという経験が全くなかったものですから、こういう時、兄弟がいると大変だなあと思ってしまうわけです。

親野さんの講演の中で、「男脳」と「女脳」という概念が出てきました。大体想像がつくかと思いますが、「男脳」というのは幼少期において未熟で成長の遅い精神的傾向で、「女脳」とは早熟で早いうちから物分かりがよい精神的傾向といった理解でよいかと思います。おおむね男児は「男脳」をもって生まれ、女児は「女脳」を生まれながら授かっていることが多いが、必ずしも体の性と脳の「性」は一致しないこともままあるということです。つまり、女の子だけれども「男脳」的な性質を持った子がいるようなことはよくあるということですね。

親野さんの言われるとおりだとしますと、二人兄弟だと、

①「男脳」-「男脳」
②「男脳」-「女脳」
③「女脳」-「男脳」
④「女脳」-「女脳」

という4パターンの兄弟姉妹配列があることになります。

幼少期、どうしてもちゃんとしてなさが際立つ「男脳」の持ち主は、「女脳」の兄弟姉妹と比べて親から叱られることが多く、自己肯定感を持ちにくくなることが多いということでした。

上の②のパターンだと、ダメ兄ちゃんになんでもちゃんとできる妹といったところでしょうか。③のパターンなら、しっかり者のお姉ちゃんにいつもぼーっとしてる弟といった感じでしょうか。非常にリアルな感じがします。『サザエさん』の、サザエ-カツオ-ワカメの兄弟配列がぴったり嵌まりますね。

まぁ、カツオ君はなかなかたくましい人物ですが、この「男脳」のお子さんへの接し方には本来細心の注意が必要ということです。もともと幼少期にきちんきちんと何でもすることが苦手な「男脳」のお子さんに厳しく接してばかりいることで、ちゃんとしつけられないどころか、その自己肯定感を毀損するようなことになるからというわけです。

この「男脳」、「女脳」の話、私の経験から言うと、「男脳」-「男脳」、「女脳」-「女脳」の兄弟姉妹でも、結構気をつけないといけないところがあるんじゃないかという気がいたします。どこのご家庭でも、第一子というものは、親自身が親の経験が乏しいところで育てられていますし、おおむね厳しく接せられていることが多いんじゃないでしょうか。一方、第二子・第三子以降になると、親の方も子育てのコツを押さえられるようになってきて、一人目の時よりは緩く育てられることが多いということがあるのではないでしょうか。責任感が強いが元気のない長男・長女と要領よい自信家の次男・次女というのは、よくあることのように思われます。

私事で恐縮ですが、私の母は今年81歳になるのですが、兄弟配列でいうと7人兄弟の4番目の次女にあたります。今でも非常に元気の良い人で、昔からスポーツでもなんでも挑戦するタイプの人です。それに対して、数年前に亡くなった母の姉(私の伯母)は、姉妹なのでお互いに似たところもあるのですが、少々陰気な感じがあることは否めませんでした。

興味深いのは、両者の自分の母親(私の祖母)評。私の母は、とにかく自分の母親が大好きだったようで、私が子どもの頃はよくその思い出話をしてくれましたし、その最期は非常に献身的に介護していたようです(祖母は私が生まれる大分前に亡くなっています)。それに対して伯母のほうは、自分の母親を怖い人だったと言っていました。たぶん子ども時代、一人目の子どもということで、厳しく育てられたところがあったのかもしれません。

伯母は生涯独身で、亡くなる直前は認知症を患い、最期は特養ホーム入所中、危篤の連絡が兄弟に伝わるのが遅れ、肉親に看取られることもありませんでした。彼女の人生が全面的に不幸だったというつもりは毛頭ありません。しかしながら、幼少期の経験から、自分の家族を持つことに消極的になってしまうようなところがあったとしたら、なんとも気の毒なことだと思われます。

兄弟姉妹に対する親の微妙な接し方の違いが子どもの人格形成に大きな影響を与えることは想像に難くありませんが、それが一生にわたってネガティブな作用をもたらすこともありうるのではないかと考えると、恐ろしいことだなと思わずにはいられません。